親族間で不動産の売買をすることは、相続対策や資金援助など、さまざまな場面で検討されます。しかし、親族間売買は通常の不動産売買とは異なる点が多く、注意すべき点も数多くあります。この記事では、親族間売買を行う際に知っておくべきメリット・デメリット、適正価格の決め方、税金、トラブル防止策などを詳しく解説します。親族間で不動産を売却・購入する際には、この記事を参考に、スムーズかつ安全な取引を進めていきましょう。
親族間売買とは?通常の不動産売買との違い
親族間売買とは、親子や兄弟姉妹など、親族間で不動産を売買することを指します。通常の不動産売買と比べて、売買条件の柔軟性や税制上の取り扱いなどに違いがあります。
親族間売買の定義と親族の範囲
不動産に関して「親族間売買」と言う場合、「親族」の範囲に厳密な定義はありません。民法上の親族は、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族ですが、この範囲外であっても、よく知っている親戚などとの間の売買は、親族間売買と考え注意しておく必要があります。例えば、叔父・叔母、いとこなどとの不動産売買も、親族間売買として扱われることがあります。
親族間売買が利用される場面
親族間売買が利用される主な場面としては、次のようなケースが挙げられます。
- 自宅を子供に安く譲りたい
- 親族のローンを肩代わりしたい
- 不動産の共有を解消したい
例えば、老後の資金が必要になった親が自宅を子供に売却し、その資金で生活費を賄う場合や、高齢の親が住宅ローンの返済が困難になった際に、子供が親から家を買い取ってローンの返済を肩代わりする場合などがあります。また、相続で不動産を共有している場合、共有状態を解消するために親族間で売買が行われるケースもあります。
親族間売買と一般的な不動産売買の違い
親族間売買と一般的な不動産売買の違いは、主に以下の3点です。
- 売買価格の決定
- 税制上の取り扱い
- 住宅ローンの利用
親族間売買では、一般的な不動産売買よりも、売買価格を自由に決められる点や、税金の控除などが適用されない点があります。また、住宅ローンの審査も厳しく、利用できない場合が多いです。
親族間売買のメリットとデメリット
親族間売買には、メリットとデメリットの両面があります。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、親族間売買を行うかどうかを判断する必要があります。
親族間売買のメリット
親族間売買のメリットは、以下の点が挙げられます。
- 売買条件を柔軟に決められる
- 愛着のある家を他人のものにしなくてすむ
- 買主を探す手間を省ける
- 仲介手数料が発生しない
- 分割払いも可能
親族間であれば、お互いの事情を理解し合っているので、売買価格や引き渡し日などの条件交渉もスムーズに行うことができます。また、長年住み慣れた家を、よく知っている親族に売却できることで、心理的な負担を軽減できる場合もあります。さらに、不動産会社に仲介を依頼せずに直接取引できるため、仲介手数料を節約できるのも大きなメリットです。
親族間売買のデメリット
親族間売買のデメリットは、以下の点が挙げられます。
- 売買価格が低いと「みなし贈与」になる
- 税制上の特例が使えないことがある
- 住宅ローンを利用しにくい
親族間売買では、通常の売買価格よりも低い価格で売買することが多いため、税務署から贈与とみなされて贈与税が課せられることがあります。また、親族間売買では、住宅の売却益に対する3,000万円の特別控除や住宅ローン控除などの税制上の特例が適用されない場合があります。さらに、金融機関は親族間売買を不正利用のリスクが高いと判断するため、住宅ローンの審査が厳しく、利用できないケースが多いです。
親族間売買におけるリスク
親族間売買では、みなし贈与や税制上の特例が使えないこと以外にも、さまざまなリスクがあります。
- 親族間でのトラブルに発展する可能性がある
- 契約書の内容に不備があると、後々トラブルになる可能性がある
- 不動産の価値を正しく評価できないと、損をする可能性がある
親族間であっても、売買契約書はしっかりと作成し、内容を確認することが大切です。また、不動産の価値を正しく評価し、適正な価格で売買を行うようにしましょう。専門家のアドバイスを受けることも有効です。
親族間売買で発生する費用
親族間売買では、通常の不動産売買と同様に、さまざまな費用が発生します。
売主にかかる費用
- 印紙税(不動産売買契約書に収入印紙を貼付)
- 抵当権抹消登記費用(不動産に抵当権が設定されている場合)
- 住宅ローンの一括返済手数料(住宅ローンの残債を一括返済した場合)
- 譲渡所得税(売却益が出た場合)
- 必要書類の発行費用(印鑑証明書、固定資産評価証明書など)
買主にかかる費用
- 印紙税(不動産売買契約書に収入印紙を貼付)
- 所有権移転登記費用(登記にかかる登録免許税)
- 抵当権設定登記費用(住宅ローンの担保として抵当権を設定する場合)
- 住宅ローン事務手数料・保証料・印紙税(買主が住宅ローンを利用する場合)
- 不動産取得税(取得時に納税)
- 必要書類の発行費用(印鑑証明書、住民票の写しなど)
親族間売買にかかる税金
親族間売買では、以下の税金が発生します。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- 不動産取得税
印紙税は、不動産売買契約書に貼付する税金です。登録免許税は、不動産の名義変更(所有権移転登記)や抵当権の設定、抹消の登記を行う際に発生する税金です。譲渡所得税は、売主が売却益を得た場合に発生する税金です。不動産取得税は、買主が不動産を取得した際に発生する税金です。
親族間売買における適正価格の決め方
親族間売買で最も重要なのは、適正な価格で売買することです。適正価格で売買しないと、みなし贈与とみなされて、贈与税が課税されてしまう可能性があります。
適正価格を決めるための方法
適正価格を決めるために、以下の方法があります。
- 不動産会社による査定価格を利用する
- 不動産鑑定士に鑑定を依頼する
- 路線価を参考に価格を決める
不動産会社による査定は、無料で受けられることが多く、手軽に価格の目安を知ることができます。不動産鑑定士による鑑定は、より正確な価格を把握できますが、費用がかかる点がデメリットです。路線価は、国税庁が公表している土地の価格の目安であり、無料で確認できます。親族間売買では、みなし贈与を避けるために、これらの方法を参考に適正価格を設定することが大切です。
価格交渉のポイント
親族間売買では、価格交渉も重要になります。お互いに納得のいく価格で売買するためには、以下のポイントを参考にしましょう。
- 冷静に、感情的にならずに交渉する
- お互いの事情を理解し、話し合いをする
- 専門家の意見を参考に、妥当な価格を判断する
親族間売買では、感情的な部分が入り込みやすく、冷静さを失ってしまうことも多いです。冷静に、お互いの事情を理解した上で、妥当な価格で売買できるよう、話し合いを重ねることが大切です。
みなし贈与を避けるための対策
みなし贈与を避けるためには、以下の対策を検討しましょう。
- 売買価格を市場価格に近づける
- 売買契約書をしっかりと作成する
- 専門家に相談する
市場価格に比べて著しく低い価格で売買すると、みなし贈与とみなされる可能性が高くなります。売買価格を市場価格に近づけることが、みなし贈与を避けるための最も有効な対策です。また、売買契約書はしっかりと作成し、内容を確認することが大切です。契約書の内容に不備があると、税務署からみなし贈与とみなされてしまう可能性があります。親族間売買では、専門家の意見を参考に、適正な価格で売買を行い、みなし贈与を避ける対策を講じることが重要です。
親族間売買をスムーズに進めるためのポイント
親族間売買は、通常の不動産売買に比べて複雑で、トラブルが発生しやすいものです。スムーズに取引を進めるためには、以下のポイントを意識することが大切です。
売買契約書の作成
売買契約書は、親族間売買であっても必ず作成することが大切です。売買契約書は、売買の内容を明確に示すものであり、トラブル発生時の証拠となります。売買契約書は、自分で作成することもできますが、専門家に依頼した方がより確実です。不動産会社や司法書士に依頼することで、法律的に問題のない契約書を作成してもらうことができます。
専門家への相談
親族間売買には、法律や税金に関する専門知識が必要です。トラブルを避けるためには、専門家に相談することが重要です。不動産会社、司法書士、税理士など、それぞれの専門分野の専門家に相談することで、適切なアドバイスを受けることができます。特に、みなし贈与を避けるための価格設定や、税金対策などについては、税理士に相談するとよいでしょう。
トラブル防止のための注意点
親族間売買では、以下の点に注意することで、トラブルを防止することができます。
- 売買価格や条件などについて、事前にしっかりと話し合いをする
- 契約書の内容を双方で確認し、合意する
- トラブル発生時の対応について、事前に決めておく
- 他の相続人にも説明し、同意を得る
親族間であっても、売買契約は法律に基づいた取引であることを意識し、トラブルを未然に防ぐための対策を講じておくことが重要です。
まとめ
親族間売買は、通常の不動産売買とは異なる点が多く、注意すべき点も数多くあります。この記事では、親族間売買を行う際に知っておくべきメリット・デメリット、適正価格の決め方、税金、トラブル防止策などを詳しく解説しました。親族間で不動産を売却・購入する際には、この記事を参考に、スムーズかつ安全な取引を進めていきましょう。
親族間売買は、適切な知識と準備があれば、メリットの多い取引方法です。しかし、トラブルに発展する可能性も高いので、この記事を参考にして、慎重に進めてください。そして、専門家のアドバイスを積極的に活用することで、安心安全な取引を実現しましょう。