相続で不動産を相続したときの固定資産税評価額の調べ方
相続で不動産を相続したとき、どれくらいの相続税がかかるか気になる方も多いのではないでしょうか?相続税を計算する際には、不動産の価値を算出する「相続税評価額」が必要になります。相続税評価額は、不動産の種類によって計算方法が異なりますが、土地や建物の評価には固定資産税評価額が関係します。この記事では、固定資産税評価額の調べ方や計算方法、相続税評価額との関係性について解説します。相続で不動産を相続した方は、ぜひ参考にしてください。

固定資産税評価額とは?相続税評価額との違いを解説

固定資産税評価額と相続税評価額は、どちらも不動産の価値を評価する際に用いられる金額ですが、用途や算出方法が異なります。それぞれの違いを理解することは、相続税の計算や対策を立てる上で非常に重要です。

固定資産税評価額とは、固定資産税の計算に使われる評価額のこと

固定資産税評価額とは、土地や建物などの固定資産に課せられる固定資産税の計算に使われる評価額のことです。固定資産税は、不動産の所有者に対して、毎年1月1日現在の所有状況に基づいて課税されます。固定資産税評価額は、原則として3年ごとに評価替えが行われます。つまり、固定資産税評価額は、毎年ではなく、3年おきに変更されるということです。固定資産税評価額は、市区町村が「固定資産評価基準」に基づいて算出します。そのため、不動産の所有者は、自分で計算する必要はありません。

相続税評価額とは、相続税の計算に使われる評価額のこと

相続税評価額とは、相続税を計算するときに用いられる財産の評価額のことです。相続税評価額は、相続税を計算する際に用いられ、一般的には、市場価格(時価)よりも低く評価されます。相続税評価額は、国税庁が定めた「財産評価基本通達」に基づいて、相続人が自ら計算します。相続税評価額は毎年更新されます。

固定資産税評価額と相続税評価額の違いは?

固定資産税評価額と相続税評価額の違いをまとめると、以下の表のようになります。

項目 固定資産税評価額 相続税評価額
用途 固定資産税の計算 相続税の計算
評価基準 市町村 国税庁
評価頻度 3年に1度 毎年
金額目安 公示価格の約70% 公示価格の約80%
調べ方 固定資産税の納税通知書や固定資産課税台帳で確認 相続人が自ら計算

固定資産税評価額の調べ方

固定資産税評価額は、不動産を相続した際に、相続税の計算や、不動産の名義変更手続き(相続登記)の際に必要となります。固定資産税評価額の調べ方は、主に以下の3つの方法があります。

固定資産税の納税通知書を確認する

固定資産税の納税通知書には、土地や建物の固定資産税評価額が記載されています。毎年4月ごろに、市区町村から送付されます。固定資産税の納税通知書は、自宅の住所や氏名、固定資産税評価額などの情報が記載されています。また、固定資産税評価額以外にも、固定資産税の計算方法や納税方法などが記載されています。固定資産税の納税通知書は、相続が発生した場合、相続人が相続税を計算したり、不動産の名義変更手続きを行う際に必要となる書類なので、大切に保管しておきましょう。

固定資産評価証明書を取得する

固定資産税の納税通知書が見つからない場合は、固定資産評価証明書を取得しましょう。固定資産評価証明書は、不動産の所有者が、その不動産の固定資産税評価額を確認するために、市区町村役場や都税事務所に申請して発行してもらう書類です。固定資産評価証明書を取得するには、申請書、手数料、本人確認書類などを提出する必要があります。発行手数料は、市区町村によって異なりますが、通常は1件あたり300円程度です。

名寄帳(固定資産課税台帳)を確認する

名寄帳(固定資産課税台帳)は、市区町村が管理している、土地や建物の所有者と、その不動産に関する情報をまとめた台帳です。名寄帳には、土地や建物の所有者の氏名、住所、地番、地目、面積、固定資産税評価額などの情報が記載されています。名寄帳は、市区町村役場の税務課などで閲覧できます。ただし、閲覧には、本人確認書類の提示や、閲覧理由の説明が必要となる場合があります。名寄帳は、固定資産税評価額だけでなく、不動産の所有者や住所などの情報も確認できます。そのため、相続が発生した場合、相続人が亡くなった方の所有していた不動産を把握するために、名寄帳を確認することが有効です。

固定資産税評価額の計算方法

固定資産税評価額は、土地と建物で計算方法が異なります。

土地の固定資産税評価額の計算方法

土地の固定資産税評価額は、路線価方式と倍率方式の2つの方法で計算されます。

路線価方式

路線価方式とは、土地の評価対象となる道路に設定されている路線価を用いて評価額を計算する方法です。路線価とは、道路に接する標準的な宅地の1㎡あたりの価格のことです。路線価は、国税庁が毎年7月に発表する路線価図で確認できます。
路線価方式による土地の固定資産税評価額の計算式は以下のとおりです。
固定資産税評価額=路線価(千円/㎡)×地積(㎡)×補正率

倍率方式

倍率方式とは、路線価が設定されていない土地の固定資産税評価額を計算する方法です。倍率方式では、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて評価額を算出します。評価倍率は、国税庁が毎年7月に発表する評価倍率表で確認できます。
倍率方式による土地の固定資産税評価額の計算式は以下のとおりです。
固定資産税評価額=固定資産税評価額×評価倍率

建物の固定資産税評価額の計算方法

建物の固定資産税評価額は、再建築価格方式で計算されます。再建築価格方式とは、建物を同じ場所に新しく建て直した場合にかかる費用を基準として評価する方法です。再建築価格方式による建物の固定資産税評価額の計算は、複雑で専門的な知識が必要となります。

固定資産税評価額と相続税評価額の関係性

固定資産税評価額は、相続税評価額を計算する際に参考となる場合があります。特に路線価が設定されていない土地の相続税評価額を計算する場合には、固定資産税評価額に倍率を掛けることで、相続税評価額を概算することができます。ただし、相続税評価額は、固定資産税評価額とは異なる評価基準に基づいて計算されますので、必ずしも固定資産税評価額と一致するとは限りません。

相続で固定資産税評価額を知る重要性

相続で不動産を相続した際に、固定資産税評価額を知ることは、相続税の申告や不動産の売却・贈与、相続手続きなどの場面で重要となります。

相続税の計算

相続税の計算には、相続税評価額を用います。相続税評価額は、固定資産税評価額をもとに計算されますが、必ずしも一致するわけではありません。相続税評価額を正しく計算するためには、固定資産税評価額に加えて、土地の路線価や評価倍率、建物の築年数などの情報を加味する必要があるのです。

不動産の売却や贈与

不動産の売却や贈与を行う場合にも、固定資産税評価額は重要な参考資料となります。不動産の売却価格や贈与額は、一般的に固定資産税評価額を参考に決定されます。また、不動産の売却や贈与によって、固定資産税や不動産取得税などの税金が発生する場合があります。固定資産税評価額を把握することで、これらの税金の計算や対策を立てることができます。

相続手続き

相続手続きには、相続登記や相続税申告など、様々な手続きが必要です。相続登記では、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きを行います。相続登記を行う際には、登録免許税を納付する必要があり、登録免許税は固定資産税評価額に基づいて計算されます。相続税申告では、相続財産の評価額を申告する必要があり、不動産の相続税評価額は、固定資産税評価額を参考に計算されます。このように、相続手続きにおいても、固定資産税評価額は重要な役割を担っているのです。

土地の相続税評価額を下げる方法

相続税評価額は、土地の条件や状況によって減額できる可能性があります。減額ポイントを知って、少しでも相続税を減らしましょう。

路線価方式の減額ポイント

路線価方式による相続税評価額は、土地の形状や道路への面し方などによって減額できる可能性があります。例えば、奥行が深い土地、間口が狭い土地、いびつな形の土地などは、使い勝手が悪いことから、評価額が低くなる傾向があります。

倍率方式の減額ポイント

倍率方式による相続税評価額は、固定資産税評価額に評価倍率を掛けて計算されます。そのため、固定資産税評価額を下げることができれば、相続税評価額も下げることができます。固定資産税評価額を下げるには、土地の用途や条件などを精査し、減額の対象となるかどうかを確認する必要があります。例えば、土地が開発制限区域内にあり、宅地として利用できない場合は、固定資産税評価額が低くなる可能性があります。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、相続した土地が特定の条件を満たす場合に、その土地の相続税評価額を最大で80%減額できる制度です。小規模宅地等の特例は、相続税評価額を大幅に減額できるため、相続税対策として有効な方法です。小規模宅地等の特例が適用できる土地は以下のとおりです。

  • 特定居住用宅地等(被相続人が住んでいた宅地)
  • 特定事業用宅地等(被相続人が事業を行っていた宅地)
  • 貸付事業用宅地等(被相続人が貸付を行っていた宅地)

小規模宅地等の特例について詳しくは、関連記事『』をお読みください。

建物の相続税評価額を下げる方法

建物の相続税評価額は、建物の状況によって減額できる可能性があります。減額ポイントを知って、少しでも相続税を減らしましょう。

賃貸物件の場合

賃貸物件として貸している場合は、相続税評価額が減額されます。貸家は、自宅と違い権利関係に縛られるため、借地権や借家権の比率に応じて相続評価額も減額されます。ただし、親族に無償で貸している場合は、この減額は適用されません。また、賃貸割合が低い場合や、長期間空室となっている場合にも減額の対象外となるケースがあります。

空き家対策

空き家を相続した場合、固定資産税や維持費などの負担がかかります。空き家を放置すると、老朽化が進んで、将来的な売却が難しくなる可能性もあります。空き家を相続した場合には、空き家対策として、売却や賃貸、解体などの選択肢を検討することが大切です。

建物の減築

建物の減築とは、建物の規模を小さくすることです。減築によって、固定資産税評価額を下げることができます。ただし、減築には、建築費用や手続きなどの費用がかかります。減築によってどの程度固定資産税評価額が減額できるのか、事前に検討する必要があります。

相続税評価額を下げるための専門家の活用

相続税評価額を下げるには、専門家の知識が必要になります。土地や建物の評価方法は複雑で、減額できるケースを見逃してしまう可能性もあります。そこで、相続税評価額を下げるために、専門家のサポートを活用することをおすすめします。

税理士への相談

税理士は、相続税の専門家です。税理士に相談することで、相続税評価額を適切に計算してもらい、節税対策を立てることができます。また、相続税申告の手続きについてもサポートしてもらえます。

不動産鑑定士への依頼

不動産鑑定士は、不動産の価値を評価する専門家です。不動産鑑定士に依頼することで、相続税評価額をより正確に算出してもらうことができます。特に、相続税評価額が複雑な土地や建物の場合は、不動産鑑定士に依頼することで、より有利な評価額を得られる可能性があります。

司法書士への相談

司法書士は、不動産の登記手続きの専門家です。司法書士に相談することで、相続登記の手続きをスムーズに進めることができます。また、相続登記に関連する相続税評価額の算出についてもアドバイスをもらえます。

まとめ

相続で不動産を相続した際には、固定資産税評価額を把握しておくことが重要です。固定資産税評価額は、相続税の計算や、不動産の売却・贈与、相続手続きなどに影響します。固定資産税評価額を調べるには、固定資産税の納税通知書、固定資産評価証明書、名寄帳などを確認する必要があります。相続税評価額を減額できるケースもありますので、相続税評価額を下げる方法を検討し、専門家のサポートを活用することをおすすめします。